ドッペル原画展

麻痺

赤い線が道に延びていくのが見えた。その線は川に沿ってうねり、途中で枝分かれしながら何処までも進み続けた。まるで体中に流れる血管であるかの様に思え、私が私の体の内部に入り込んでしまったのを想像した。見えない位に小さくなってこっそり体に入り込…

無害

12時半を境目にして腕時計の針は動かなくなった。今まで動いていたものが急に動かなくなるのは人の死と似ている。寂しさを覚えるのは、確かに時計が動いていた過去があるにも関わらず、それが今後一切再開されないと確定してしまったからだろう。意味の有っ…

氾濫

新宿GUCCIの前で歌舞伎町のホストに話しかけられたことをきっかけにして、私はクリープハイプの尾崎世界観になれることを確信した。ここではない世界や今の自分と違う価値観を武器にして、堕ちるところまで堕ちていける予感がしたのだ。今から抜け出して違う…

日記

関わる人間全てが嫌いなあの人の顔に似てきている。 特に「醜い物」は全部あの人になっている。似ている人や物に対する私の対応は酷いものだ。ただ似ているというだけなのに、嫌いなあの人との区別を付けられず、好ましくない態度を取ってしまうという終わり…

天国

どうやって予定時刻より早く帰ろうか考えていた。帰宅予定時刻は21時半だったが、21時には帰りたかった。こういう時、何故我々は時間に縛られ時間に従い時間と共に過ごしているのかその起源にまで不信感を募らせ、最終的に私の頭には「(時間が消えれば)待ち…

喪失

細い道の向かい側から、部活動合宿帰りの団体が歩いてきて、僕は細い道の向こう側へなかなか進めなかった。それは永遠に往来し続ける羊の群れで、細い管の中を何千年もかけて行ったり来たりする儀式の様に見えた。僕はその儀式を邪魔しない為に、約8分間、群…

破壊

全てを"ぶち壊す"といった出来事が日常には多々あり、壊す対象が何であろうとも、その出来事は強力な破壊力を持っている。壊された側の空間に居た自分や、そこに含まれていた時間は二度と元には戻る事はない。その時の状態がそっくりそのまま現れ、再考され…

水辺

骨から血が出ることはありえるのだろうか? 痛みもなく、怪我の気配もなく、血の出処もないのに、足首の骨から血が止まらなくなっている。急いで日陰に入り、ハンカチで拭った、止まらない血が怖い、こめかみが痛む、丁寧に溜息を吐いて、視界が曇ると、なん…

眩暈

私が誰かを信じる時はいつも全身全霊で、裏切られた時は命の一部が欠けてしまう感覚のせいで呼吸が苦しくなる事を誰にも言った事が無い。私の命はもう何度も欠けていて、実際に見る事は出来ないけれど、あと五回くらい欠けたらきっと消えていく。信じていた…

早朝

イヤホンのコードが知らない人の鞄のファスナーの隙間に入り込んで取れなくなった。私はTHENOVEMBERSの彼岸で散る青というとても美しい曲を聴いている最中で、このままイヤホンの導線が切れて音が聴こえなくなったらどうしようと泣きそうになっていた。この…

宴会

デニーズでサラリーマン達が宴会を開いていた。「デニーズで忘年会?!」私は多少驚きつつ、デニーズから撤退しようと決意した。彼らが楽しそうに社会性をばら撒きながら私の聖地を妨害しているような気がしつつも、忘年会の会場に〝デニーズ〟を選ぶ独特の…

正月

私が大学生だった頃、日常の大半は嫌いな人の嫌いな部分に思いを馳せていた。TVを見ながら「やっぱり嫌いだなぁ」と懐かしげに思ったり、お風呂に浸かりながら「実に嫌いだ」と若干憤りながら痛感したり、煙草を吸いながら「完全に嫌いですね」と生真面目な…

絵画

家族に監視されていて毎日苦しい 10教科中9教科がSで1つAだった。興味がある好きな事には没頭出来るというのがはっきりと分かる。反対に、興味が無い嫌いな物についてはもうどうする事も出来ない。どうする事も出来ないから、結局放置して無視するようになっ…

国境

感想を残しておこうと思っていたのに、思い始めてから約一ヶ月が経ってしまった。何故今こうして突発的に感想を書き始めたのかというと、明日から私は五日間旅に出るからだ。恐らく過酷で、後悔の多い旅になる。そして、旅の前後で周りも自分も全く異なるも…

八月

『 何かのファンになるというのはとても孤独な活動で、その活動上に見返りや満足感を決して求めてはいけない。その何かは僕達ファンに救いや希望を与えてくれるかもしれないけれど、救いや希望を与えた本人は与えられた側に何の興味も無いはずだ、本当の所は…

本の感想として曲の歌詞を書く。 「この曲は何の小説を想像した歌詞だと思う?」と聞く。 相手が答えた小説がこの歌詞の気持ちと一致した時、どれ程素晴らしい嬉しさや感動が湧き出てくるのだろう。 それらを想像すると楽しくなるのに、少し切ない。 切なさ…

宿痾

飛行機に乗っているシーンから始まり、それから約800ページ分、主人公が過去を〝回想〟し続けて終わっていく物語について。私はその物語を〈既に死につつ有る男の走馬灯〉として読むことにした。もちろん初めて読んだ時はそんな風に捻れた読み方をしなかった…

方法

わざと孤独に寄り添うと、必ず後を付けられる。思い悩んで、悲しくてどうしようも無い様な、今にも泣きそうな、今にも吐き出してしまいそうな表情すると。後を付けてきた男に話しかけられて、素直に振り返ったら、其処には小説の中から出てきた言葉が目の前…

暴力

カーテンレールに吊るして乾燥させてた花束が、不意に足元に落下した音で目が覚めた。頭から眠気が抜けていくほんの一瞬、足元に落ちた物は完璧に死体だと思っていた。夢との関係性でそういう寝惚け方をあえてしていた。私は、現実から聴こえるカラスの鳴き…

日記

( 1 )長い夢を見ている様だ。200頁の論文をA4用紙1枚に纏める事が強制になった春の水曜日から、思うように頭が動かなくなっていた。頭が思うように動かないと人間は何一つ自分の意思で行動が出来無い。脳は心であり、心は脳であるからだ。そもそも、心という…

季節

今年は何故か、夏は早く来て欲しいと感じる。「夏が早く来て欲しい」というより「夏は早く来るべきであるよね、今年に関しては」という気分。どうしてだろう、夏は嫌いなのに。一つ思い浮かぶのは、気管が洗われる様な涼しい部屋の中で、本を読んだり氷を食…

印象

私にも一応好きな空間というものが在る。それには人々が存在するべき場所としての空間と目に見えない存在としての空間の二種類があって、これからもっと種類は増えるかもしれない。 例えば私が好きな空間の一つは大学という場所だと思う。その空間の内側に在…

人魚

TVの中から聞こえる大きな歓声が苦手。 あの音は異常にうるさい、こちら側の安定をわざと掻き乱す様な悪意がある。こちら側が既に混乱している場合には更にその混乱を強めてくれる様な厚意もある。どちらにしても、TVの中から聞こえる大きな歓声の事が本当に…

嘲笑

私がゆっくり書き続けた文章の中に、 毎晩瞼を閉じる事が出来ない病人がいる。何時間か前にその病人が道端で倒れて病院に運ばれるのを見た。私はその時すごく悲しい気持ちだったのに、誰かと何年か前一緒に行った水族館の話をして無理矢理笑顔になっていた。…

真白

AB型RHマイナスっぽい人 そういう人は大体絵に描かれる様な現実離れした眩しい黄緑色を好んで、その色のコートや自転車を所有している事が多いです。悩ましいのは、その色を積極的に好む人の事を私はどうしようもなく好きになってしまうという事が決まってい…

寝室

誰の目にも留まる事の無い孤独 触れても壊れない孤独、強い孤独 生命力のある孤独、見られたい孤独 全部馬鹿にされてる恥ずかしい、命日を忘れた 大切だった事を忘れてしまえばそれはただの忘れられた記憶になって、他の忘れた記憶の重なりから取り出せなく…

救心

風に吹かれてふわりと浮かんだ物が真っ白で綺麗な鳥に見えた、こんなに汚い駅の汚い線路の上にこんなに綺麗な白鳥がいてそれでこんなに優しく飛ぼうとするなんて、近寄って見ると誰かに捨てられたただのゴミ袋だった ゴミ袋は乱暴に走ってきた電車に跳ねられ…

光國

遠藤周作の「海と毒薬」九州の病院でアメリカ人捕虜の生体解剖という忌まわしい事件を細部に描いていた。日本人がアメリカ人を捕虜にして解剖したという事件において、日本人のいかなる精神性、論理的な心理がどのように働きかけたのか、そして日本人とは一…

憂鬱

家を出てから駅までの道の事をもうずっと好きになれていない。長い直線、人とすれ違うと一瞬で不満感で頭が痛くなる。どうしてこんな風になるのだろうと考えれば考えるほど、早く親に「周りの親達を見ていても子供を育てるのが羨ましいとか、愛のある行為だ…

夜になると身体の奥から何かを掬い出すみたいに誰かの指がうねる その指がいつの間にか頭の中にまで届いて脳の中を掻き回すと、気分が悪くなっていく さしづめ気持ちの良い夜の中で眠りに落ちる 可笑しな化学物質が反応するまで、全部諦めて涙が出るまで、執…