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ドッペル原画展

幽閉


知らない旗に色を添えて僕らは国歌を歌った
街中に気高い意識が溢れると
毎晩のように明るい夜が訪れた

喩えその気高い意識が
他人から盗んだものだとしても
僕らは明るい夜を謳歌する
毎晩のように息が苦しい

朝、銃声に耳を澄ます
小鳥の囀りはいつでも煩くて
此処に在る物全てが消えて無くなっても
何も悲しくないと思った

息が苦しくて それを誤魔化すように
僕らは銃声と共に歌を歌った
そのどれもが煩く 必要のないもの

深く関係のない事情
知らない苦痛を目の前にして
立ち向かう勇気もないままに
僕らは大人になった
それも、悲しくないと思った

夜は何度も何度も訪れて
街を賑やかにした
僕らにとって街は煩く
必要がない

賑やかな街を後にして
森の奥へ走る
逃げるように駆けると
いつの間にか一人になった

冷たい石の上
汚い花束、刻まれた僕の名前

背の高い老父
優しい 僕よりも子供の目
手を差し伸べられたら
何かが始まって
何かが終わった

穴の開いた僕の体 必要のない
それを確かめるように
老父は僕の心臓の上を撫でる

何かが始まって
何かが終わった

懐かしい暗闇に目を伏せて
僕は悲しむことができずにいる

老父に触れられた心臓の中から
誰かの視線を感じて驚くと
僕の体は石の上に倒れた
冷たい石の感覚は脆くなり
皮膚が溶かされていく 
埋まるように吸い込まれて動けなくなった

老父は僕の心臓の上に花束を置いた
僕の体に蓋をするように
溢れる視線を閉じ込めるように

喩え僕の体が永久に閉ざされることが
死の始まりだとしても
何も悲しくないと思った