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ドッペル原画展

反芻


「現実を良く見れば何一つ輝いているものがないのに何故其れは頭の中に長いこと居座っているのか」と思い、手首の皮膚を確かめる様に撫でる、撫でる度に頭が背後から抑えつけられながらも眼前から思い切りに殴られている様な感覚、持つ手は震えて感覚が鈍くなった、五年前にも、四年前にも、三年前にもこの様な感覚を態々感じる事が出来て本当に本当に良かったと思っている 時々優しい時があってその瞬間だけが今でも要らないものだったと信じる もらった手紙を捨てた 信じている事は真実だと思った 誰の記憶の中でも自分の顔をした自分じゃない誰かが存在しているのならば、確かな優しさや思い出すだけで懐かしくなる様な事は全て他人の人生の中に在るものだった ノスタルジックと言う言葉が好きだ、でも、誰の言葉を借りても自由になれない

「結婚したら白無垢が着たい」と言った人、電車の中で、それが頭の中に張り付いて今日も眠れない 愈々自分自身の事が何よりも誰よりもどうでも良い存在になる 自分の言葉は無意味で無価値 電車の中の他人が言った願い事に眠れない程反応し、羨ましくなったりする

「そんな子がこの家に居る資格は無い」と怒鳴られた子供 「資格?」とすかした顔で言う、時折別の意識で笑っている 馬鹿みたいな茶番を背後から見ている 全部が誰かに操られた舞台みたいだ、寂れた街の誰も来ないような汚いシアターで披露されるくだらない舞台

「もう無理かもしれない」そんな事を毎日の様に言っていたくせに、夏休みの間由比ヶ浜に行って波風を感じるなんて 君きっとどこか狂っているよ、許す許さないの問題じゃない、狂ってる

「自分より生きている人のほうが命の重さを分かっているみたいな風潮」と思わず書いた、何も知らないくせに子供だからと馬鹿にされた 大人が怖くて誰にも相談できなかった 高瀬舟の小論文も学級日誌の日記欄も全部遺書にした

「五年前から毎日同じ夢を見る」という題名の本を買った 絶対に嘘でしょうね と思った、どれだけ記憶に自信が有っても 夢は、夢だけは毎日覚えていられない もしかすると五年前から毎日見る同じ夢は思い込みなのかもしれない 朝起きてから妄想し、妄想したものを勝手に夢だと思い込んで譲らない 記憶に自信があっても小学生の頃保健室で泣いた理由や合唱練習中に助けてくれた手の持ち主を覚えていられない 思い込めば良い、毎日同じ夢だと思い込んで譲らなければ良い 知らない犬が家の前で吠え続けて邪魔になった、過去の事を思い出せない夢が五年前から続いている