ドッペル原画展

模倣

市民は四角い箱を被っている
過去の視線はどこかに消えて
娯楽は恥になった

僕は未だ恥を犯しながら人間の言葉が張り付いて、
眠れない夜を必死に守る

言葉は無価値で全部不可欠
誰の言葉を借りても自由になれない

天国に行きたくて
時々電車に乗る

「天国は自由」
借りたままの本の裏表紙に書かれた
乱雑な落書き

駅のホームの自販機が少し呼吸
売り切れの文字が点滅して
リズムを打つ
僕は笑っている

恥ばかり
箱を被らない命の無いもの
その視線に怯えている

空き缶が捨てられたごみ箱
滅茶苦茶に掻き乱されて
何にも触れられない
何にも触れたくなくて怯えている
箱を被った市民が同化、
決して交わらない視線それをかわして一体今日は何をしているのだろう 何の意味も持つことが出来ず誰にも響かない文章、何にもなれなくて時々医学書を開く 生前前から全てを知っている様な気がして全てへの興味を手放す、拉致の開かない会話を永遠に自分とし続けていたい、永遠じゃないのなら今すぐに君を殺してしまいたい、こんな事を言うとどうしたのって馬鹿にしたように笑う友達 その光景が浮かばない レンタルビデオの雪崩で死にたい、防犯カメラに写る命の無い人間 上映された気味の悪い死体、どうしたのって鏡の前で笑うのが癖になって知らない他人に会いたくなる 適当なことばかり言って染み付いたのは無関心な春、永遠に見ることのできない桜の羅列が今年も頭の中に芽生えて、早い所枯らしたいと思う 自分の中から湧き出るこのくだらない願いに願いを託す、生前前から全てを知っている様な気がして、思い入れのある事を身勝手に手放せなくなった 何を言葉にしても全てが恥ずかしい 自分の事は自分だけ知っていたい、言葉は自分を恥ずかしい存在にするだけの無関心な春だ