ドッペル原画展


ランドセルを掴まれると地面から足が離れて身体が宙に浮いた、掴まれたランドセルに自分の背中が引き寄せられるみたいにぴったりと張り付いたまま身体は何度も何度も何度も回って最後には地面に放り投げられた 宙に浮いたばかりだった足は空気を切った感覚を忘れられないまま震えてばかりで力が入らない 放り投げられた地面からは何も考えられない雑草が生えていて、何も考えられない花が枯れそうに変色し始めていて、その時は特別いい身分だと思った 震える足に怒り懇親の力みたいな可笑しな気力が入り始めた途端思い切り草とその横を通る蟻を踏み潰して水道がある下駄箱に向かった 血が出た掌の風景が、本当にあったのかそれとも今創ったのか夢なのか分からない
過去の風景や過去の出来事を勝手に創って自分の過去に確かに存在したものだと決めつける癖がある 友人は死んでいないのかもしれないけれど、自分の過去に友人は死んでしまった 最悪な思い出を幾らでも思い出すことが出来て、思い出す度に本物と偽物の区別がしづらくなった、時々区別はもうどうでもいいかなと思ってくる、ただ、宙を回った事は本物の過去であってほしい

宙を回るのはとてもいい気分だった
回っている自分の事を思い出すと泣き叫んでいて本当に面白い どうしても笑えない時に宙を回る自分を思い出す 全然怖くないのに、怖くなかったはずなのにどうして泣いているのだろうと思う
周りの子供達に混ざって一緒に笑いながら泣き叫び回される自分を囲って眺める、色々な原因が此処にあるのかもしれないと考えてしまう 解決しようにも回転の先をただ見つめて笑うことしかできないやるせない気分で、頭が回る
誰も止めない回転がやっと終わった時に、子供達と一緒に回転を眺めていた自分の顔が歪む 膝とか、掌から血が溢れていて気味が悪い 気味悪く泣き叫んでいた人間が何かを踏み潰して走るとまた笑いが起こって、子供達は走る人間を追いかけて、水道の前に着くと手を叩いて大きく笑った