ドッペル原画展

根源

 

 

お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません。Ⅰ,実は少し前に体調を崩し、入院していた。四人部屋だったが、カラフルに光るライトを点けながら寝るタイプの人間が1人おり、毎日全く眠れず、その部分に関してはすごく辛かった。眠れない日は、ゴダールのマリアを観た。少女が美しく、何より題名が私の心を掴んでいた。入院中の1日はとても長かったが、ベッドに寝ているだけで何もかもが済んでしまうから楽だった。私は根っからの病人気質である。社会で大活躍し、仕事することに生を見いだせるような商人気質ではない。それを痛感し、自然と涙が溢れ、溢れる度に入院期間も長引いた。Ⅱ,ゴダールのマリアポンヌフの恋人はやはり美しいが、それは何故美しいのか。その美しさの根源を知りたかったが、そもそも私はそれらの何処に美しさを感じているのかはっきりと分からなかった為諦めた日もあった。次の日もう一度考えようとしたが、目の裏で点滅する赤や黄色や水色が消えてくれず、とても考えるには及ばなかった。考える代わりに、からだのやまい。と、呟き、嫌な気分になった。この全ては誰のせいなのか?その根源も美しさと同時に知りたい気持ちは、いつか叶うだろうか。早くここから抜け出さなくては。という焦りが、熱を持って血液を伝い、顔が火照った。まるで知恵熱の様だ。結局のところ、何かを知るには私の世界は狭すぎる。海外へ行ったら広いだろうか?そう考えていた頃、同部屋のカラフルに照らす人が「退院したら海外へ行く予定なの」と話しかけてきた。まるで私の心を読んだようなタイミングであった。私はもう此処には何も残っていなかったので、後先考えず、自分もついて行って良いかと聞いた。彼女は少し微笑んだ。2人で3ヶ月後に退院しよう。と言った。Ⅲ,空港に9時待ち合わせだったが、彼女は来なかった。一人でフランスに行こうかと思ったが、怖くなり辞めた。ノルウェイの森は、確か飛行機内で過去を回想している状態が2冊に及び、二度と回想から帰ってこない。「僕は今どこにいるのだろう」みたいな台詞で終わるのが何とも痺れる。色々な状況に呑まれ、自分の居場所が分からなくなるのは良く有る話だ。チケットを無駄にするのも嫌だったので、とりあえず飛行機にやはり乗ることにした。席に向かうと、彼女がいるはずの場所に、知らない男が居た。彼は、彼女の代わりに来たのだと言い、彼女は昨夜自殺したのだと言った。「僕が彼女の代わりに、貴方とフランスへ行きます。そうしてほしいとあの人が言ったから」私はよく分からなかったが「そうですか」と言った。頭の中では、彼女が何故死んでしまったのか、その理由の根源は何だったのか、考えが渦のようにぐるぐる周っており、一つの絵になりそうだった。彼はアテンダントに魚か鶏どちらにするか聞かれ「鶏」と答えた後、彼女との過去を語りだした。これは小説2冊分くらいになりそうであり、現実に現れたノルウェイの森的状況であった。私は一体今どこにいるのだろう。彼女も、彼も、一体どこにいるのだろう?Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのどれかが本当の話で、どれかが全くの嘘かもしれない。しかし、このどれもが本当である可能性もあり、この全てが嘘かもしれない。1つだけ確かなのは、私は今日も生きている。酷い頭痛に苦しみながら。